鹿紙堂奇想譚

そらをふむ きみのあしおとを きいている

まだ存在していない本『玻璃の草原』の取材旅行(半日×2回)行ってきたよ記

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こんばんみ。鹿紙路です。

最近は↑が仮表紙の『玻璃の草原』という小説を書いています。11月の文フリ東京で発刊予定です。今回はその本のために取材旅行に行ってきたよ、という、読み手としてはどうリアクションを取ったらいいかわからない記事です。ね???? どういういことだ。自分でもよくわからん。けど、古代の武蔵国多磨郡に興味があるひとは(わたし以外にここにたどりついているのか?????)ちょっとは参考になるかもしれません。

『玻璃の草原』あらすじ

9世紀(平安時代前期)、武蔵国多磨郡(現代では東京都の多摩あたり)。農民の少女糸は麻布を晒していた川で、エミシの少女野志宇(のしう)と出会う。エミシたちはヤマトによる征服戦争のあと、各地に強制移住させられていた。ささやかなふれあいを通じて想い合うふたり。しかし、ヤマトとエミシ、さらには韓(から)のひとびとの思惑が対立するなか、糸は野志宇とともに北へ行きたいと願い始める――

という、わたし以外はたぶん思いつかない(クソデカ自意識)、古代の関東地方、織物が好きなヤマトの少女と、牛や馬を育てて暮らしているエミシの少女の百合です。少女っていっても野志宇のほうは二十歳くらいのイメージですが。

ということで、古代の多摩地方が舞台の小説を書くので、イメージしやすいように現地に行ってみよう、という主旨の取材旅行です。旅行といっても半日日帰りを二回した、というだけですが。千葉県民だけど。

大丈夫大丈夫、飛鳥やアッシリアより全然近い(いずれも去年出した本の舞台)。東北の古代城柵二個一日で回るより全然楽。歩き回ったけどな!

 

一回目:府中郷土の森博物館と多摩川

午後から京王線に延々と乗り、分倍河原駅へ。分倍河原。読めないよね。ぶばいがわらです。中世には大きい戦もあったらしい。分倍河原合戦。電車を降りてさくっとバスに乗り、

府中市郷土の森博物館|公益財団法人府中文化振興財団

へ。えっさっき見たら10/1から休館ですって。危なかった間に合った……!

府中は古代には国府(いまで言う県庁みたいなもの)が置かれて、武蔵国の中心地だったわけですが、この博物館はそこにもフィーチャーした郷土資料館です。郷土資料館というと、わたしの貧困な先入観だと、ちいさくて資料もすくないイメージがあったのですが、こちらはぜんぜん違います。まず敷地が公園。そのなかに古民家や洋館などが移築されていて、田んぼや植生の再現もある。隣にプラネタリウム。という盛りだくさんな場所です。お子さんだったら一日つぶせる感じ。博物館の歴史展示もかなり力が入っていて、

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古代だけでもこんな感じ。ジオラマやキャプションが洗練されていて、想像しやすかったです。

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金属製品や木工具の展示や

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古代の武蔵国府周辺のジオラマなどが圧巻です。

九州に送られる防人についてのVTRが流れてたんですが、しかしあれはどうだろうか。古代ってあんまり農民には性差がなくて、女性も財産経営をするし、そもそも結婚という紐帯の意味づけがうすいんですけど、VTRだと夫を送るのに妻が出てくるんですが、うやうやしい敬語で夫に話しかける。万葉集(中国的な価値観の強いひとが編集した)の記述を額面通り受け止めすぎじゃないか、という気がします。

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屋外展示のまいまいず井戸(螺旋形に道が下っていき、井戸が底にあるもの。平安時代から似たかたちの井戸が周辺にあったらしい)(まいまい=カタツムリ)が面白かったです。

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萩のトンネルがあり、萩は作中にも出てくるので嬉々としてくぐりました。

 

博物館を出たあとは、そこからほど近い多摩川の土手へ。

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小雨が降ったりやんだりのあいにくの天気で、多摩丘陵も雲がかかっていたりして見えたり見えなかったりですが、聖蹟桜ヶ丘方面へ徒歩で移動。

途中、多摩川を橋で渡り、

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goo.gl

こんな経路で、府中市から多摩市へ移動しました。

今回の目的として、登場人物たちが持っていた地理感覚や地形の実際を見てみたかったので、主人公のひとりが住んでいる場所の近くをうろうろしてみたのです。

聖蹟桜ヶ丘駅周辺は、落川・一ノ宮遺跡という、巨大な集落遺跡に含まれており、エミシの少女野志宇が住んでいたところ、という設定です。

 

しかし多摩丘陵、丘陵だからアップダウンが激しい。いや、多摩川周辺は平坦なんですが、駅の近くになるともう勾配がありますね。ということで時間も押してきたし、電車に乗ります。二駅さきの高幡不動駅へ。

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目的地は「三沢」です。なにせ主人公の糸が住んでいた設定の地名です。おお、実在する~(地図に載っているんだから当たり前ですが)と思いながら駅を出て、

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三沢! 三沢だ! と思いながら丘をのぼ……のぼ……

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すぐ挫折。急すぎ。階段のわきを地元の方がさっさと追い抜いていきました。多摩民、足腰強すぎ……。

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夜景だけ撮って駅に戻りました。写真へたすぎてぼやけてるけど……(スマホのカメラがダメダメ)

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うぇーいマッコリマッコリ~(高幡不動駅の餃子屋さん)

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うぇーいパクチーサラダと餃子~~~~

 

ということで一回目は終了。

 

二回目:多摩モノレールに乗って多摩センターへ

 Googleマップとにらめっこしているうちに、多摩モノレールの沿線が気になってきたんですよ。高架なので地形がわかりやすいし、多摩川を通って、主人公糸の村設定の地域から、もうひとりの主人公野志宇の一時的な移住地である帝京大八王子キャンパスのちかくを通り、多摩センターにつく。多摩センターには、近在の牧・小野牧の研究を紀要にまとめているパルテノン多摩の博物館があります。ということで立川駅から多摩モノレールに乗って南下し、多摩センターに行きました。

 立川南駅と北駅がある! 難度高い……けどたぶん南駅だろうということで南駅から乗りました。

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わ~いモノレールだよ!

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丘陵地に家が建ってるのがよくわかります。

 多摩動物公園とかを通って20分ほどで着いたぞ多摩センター!

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なんか歩道が広いしたてものもでかいし宗教都市のようだ……しかも奥にあるのが「パルテノン多摩」……。

とりあえず駅のすぐ近くの東京都埋蔵文化財センターへ。

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縄文時代の植生を再現し、住居の復元も何棟かある縄文の森があるよ。館内含め無料)

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馬具(くつわ)!!!
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炭化した古代のわらじ!!!!

意気揚々と向かったパルテノン多摩の博物館ですが……

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改修工事中で休館してた。

いや、ホームページはちゃんと見たんですけど、そこにも休館中って書いてあったんですけど、なんでか母体のパルテノン多摩のたてものの一部は改装中でも博物館はやってると思い込んでいた……。

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茫然と裏の巨大な池のほとりにたたずむ……。

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鯉もいるしカモもいるし亀もいた。すごい。情報量の多い池

くじけない心を持った人間であるわたくし、くじけず近くに図書館を見つける。

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(廃校になった学校を改装したのかな?って感じの建物)

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郷土コーナーで関連してそうな本を見つけたのでその場で読んだ。

ということでわりかしへとへとになったので、ドトールの強いやつ(「ドトール珈琲店」)でスキレットで焼いたフワサクなパンケーキ食べて、また延々と京王線に乗って帰宅しました。

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結論。

 お疲れ様でした!!!!